教育やビジネス、スポーツなど、幅広い分野で実績をあげている「コーチング」。近年はグローバル規模でコーチングを活用する人口が増え、日本でも定着しつつあります。
とはいえ、実際のところ「コーチングとはどのようなものなの?」「私たちの生き方・働き方にどのように役立つの?」とお思いの方も少なくないはず。そこでこの連載コラムでは、ワークライフバランスの2大要素である“仕事”と“プライベート”の側面から「私たちの日常に資するコーチング」について、ライフビジネスプロデューサー・松永真由氏がお届けします。
#2 【仕事】後悔しないキャリアを選択するための3つのポイント
ライフビジネスプロデューサー : 松永 真由
- T&R認定 デュアルデザイン(R)
- コーチングプロフェッショナル資格
- T&R認定 LD(R)ビジョン分析アドバイザー
15年前よりカラーセラピストとして活動を始め、その後様々な心理学・催眠療法・コーチングなどを学び、プログラムのアップデートを重ねる。
現在は「脳科学」と「心理学」を中心に、意識だけではなく無意識の力も活用した「ライフシフトプログラム」を提唱。
ライフビジネスプロデューサーとして、「本当にやりたいことを見つけて実現していきたい方」に向け、メンタル・コーチングの個人セッションやグループワークを提供し、個人から企業まで幅広くクライアントをサポートしている。
キャリア選択のために必要なこと
自分らしい生き方、働き方に大きな影響を与える「キャリア」。その選択にあたり、
「昇進すると給料は上がるけど今より忙しくなりそう……。結婚や出産の可能性も考えると、仕事とプライベートのどちらに重きを置くべき?」
「一度きりの人生、多少リスクがあってもやりがいを感じられる仕事に就きたい。でも生活の安定も大事だし、精神的にも肉体的にも負担が大きくなるのは不安で……」
などと、今の仕事を続けるべきか、それとも転職しようかと悩む方が少なくないと思います。後悔しないキャリアを選ぶためには、しなやかに成長、変化していける「メンタルの土台を」創っていくことが重要です。まずは以下の3つの視点で自分のマインド・心理面をチェックしてみましょう。
- 将来どうなりたいかを考える:【未来】
- 自分の過去と向き合う:【過去】
- 目の前にあるチャンスや機会を見落とさない:【現在】
自分らしい生き方・働き方ためには【未来】【過去】【現在】の3つの時間軸から「自分と上手に向き合う」ことが重要です。次項から一つずつ説明していきますので、ぜひ確認してみてください。
将来どうなりたいかを考える
後悔しないキャリア選択をしていくためには、最初に「将来どうなりたいかを考える」ことが大切です。ここを突き詰めることで、あなたが「なぜ今その選択をするのか」という動機の決め手になるからです。
たとえば“仕事重視”の人生と“プライベート重視”の人生では将来像が異なりますし、求められる決断も違うことが想像できますよね。
後悔しない選択をする第一歩は、この「自分の将来」を考えてみることです。それには次の2つの側面があります。
- 物質面・外側の理想
- 仕事面:例)何の分野でどんな成果を出していたい?
- 収入面:例)手にしていたい結果は?
- 健康面:例)どのような状態になっていたい?
- 人間関係 例)どのような人たちと働いていたい?
- 心理面・内側の理想
- 性格:例)内面はどのように成長をしていたい?
- ライフスタイル:例)どんな暮らし方をしていたい?
- 時間の使い方:例)どのような時間の使い方をしていたい?
10年後、20年後など、できるだけ遠くの将来をイメージしてください。人によっては簡単にイメージできる分野と、なかなか思いつかない分野があるかもしれません。また、近い将来はイメージできるけど、遠くだと思い浮かばないということもあるかもしれません。それでも構いません。
「できるかできないか」「どんな方法で実現するか」「具体的にいつまでに達成していたいか」といったことは、この段階で考える必要はありません。ここはなるべく自由に柔軟な発想で考えてみることが大切です。
そして、キャリアを選択するときに「将来の自分にプラスになりそうか」という観点でチェックしてみると良いでしょう。
自分の過去と向き合う
後悔しないキャリア選択には「自分の過去と向き合う」ことも大切です。自分の過去には「今、目の前にある選択」のヒントが沢山隠されているからです。
過去の行動において「うまくいった時のこと」と「後悔していること」では、得られるヒントが変わります。後悔しない選択をするためには「過去からどんなヒントを得るか」がポイントとなります。まずはヒント例を見ていきましょう。
【うまくいった時のこと】
- 誘われて行った場所でいい出会いがあり、それが今の仕事のきっかけとなった
- 未経験の分野だったけれど、飛び込んでみたら想像以上にやりがいを感じられた
- 普段はしないことを敢えてしてみたら、転機につながった
【後悔していること】
- 親や上司、友達などのアドバイスを鵜呑みにしたが、本当によかったのかと悩んだ
- 望むチャンスが来たけれど次期早々と自信が持てず、断ってしまった
- 未経験のことを挑戦するには遅い、と諦めてしまった
上記を参考に自分の過去を振り返り、今の状況と照らし合わせてみましょう。
「うまくいった時のこと」と同じパターンだな、と思えば行動しやすいですよね。
「後悔していること」と似ている状況だな、と思えば、今回は行動を変えてみようと新しい選択や決断ができるかもしれません。
過去と向き合う時には、そこから「何が学べるか?」という視点が重要です。反省や後悔のために向き合うのではなく、あくまでも「将来にプラスになるヒントを得るため」という目的を忘れず、上手に向き合ってみてください。そうすることで、過去の「うまくいった時のこと」も「後悔していること」も今の自分の成長、変化のために活かすことができるでしょう。
目の前にあるチャンスや機会を見落とさない
今は環境が目まぐるしく変わるため、将来を見通して計画を建て、積み上げていくことが難しい時代です。そんな中でも後悔しないキャリアを築けていると実感している人たちには、「目の前にあるチャンスや機会を見落とさない」という共通点があります。
プランドハップンスタンス(Planned Happenstance)という理論(キャリア心理学における偶発理論)をご存知でしょうか? 1999年にスタンフォード大学の教育学と心理学の教授であるクランボルツ教授によって提唱されたもので、「計画された偶然」や「計画的偶発性理論」と訳されます。
「キャリアの8割が、予想できない偶然の出来事によって決定される」という考えのもと、その偶然を待つだけではなく「主体的に活用すること」、そして「偶然が発生するように積極的に行動すること」が大切である、という理論です。「今できることを直感に従って行動していく」ことで、偶然の機会によって人生もキャリアもプラスに変わっていく、と言い換えることもできます。
将来を予測できないという不安もありますが、過去の延長線上にはない、自分が想像していた以上の生き方、働き方があなたを待っている可能性があるのです。ぜひ心も視野もオープンにし、目の前にあるチャンスや機会に飛び込んでみてはいかがでしょうか。取るに足らないことと思える些細な変化が、近い未来ではあなたの人生に大きな影響を与えているかもしれません。そのようなチャンスや機会は、必ずしもあなたの準備が完璧にできてから訪れるとは限らないのです。多少のリスクを取ること恐れてはいけません。
後悔しないための基本は「自分基準の軸を持つ」
後悔しないためのキャリアを選択するため、ここまで3つのポイントで考えてきました。しかし、最終的に大事なのは、あなたの望む生き方と築くキャリアが一致して「より豊かで自分らしい生き方」になっていくことです。
自分が選択したことが正しかったかどうか、評価することはできません。なぜならその結果は、1年後と10年後で感じ方が変化する場合があるからです。
例えば、転職1年後は想像以上に仕事がキツく、転職しなければよかったと思っている人がいるとします。しかし、転職しなかったとしても、10年後は前職の業績悪化や倒産などで失職している可能性もあるわけです。自分が選択したこと、しなかったことに対して「ああすればよかった」「これでよかったのか」と比較するのは無意味なことなのです。
後悔しないキャリアを築くには、直感的・感情的に「自分がやりたいと思った方を選択する」こと。それが自分基準を持つということです。
人は、自分で選んだことであれば後悔しにくいものです。迷って悩んだ時は「慌てずに納得いくまで選択に時間をかけていい」と自分に言い聞かせてください。たとえ「やりたい!」と直感的・感情的に選ぶことができなくても、じっくり選んだという納得感があれば、後悔しないはずです。
他人基準ではなく「自分基準で選ぶ」こと。そして、常に「自分が良い」とその時点で思った選択をしてきたのだから、ということを思い出してください。
年収アップ・キャリアアップを望むのも、結婚や出産などのプライベートを重視しつつ働くのも、今はどちらも挑戦できる時代です。
人生は選択の連続。キャリアも同じです。
答えはあなたの内側にあります。【未来】【過去】【現在】の3つの視点で「自分と上手に向き合う」。そして、納得のいく選択をしてくださいね。
全てが計画通り、思い通りにならなくても、想像以上の「自分らしい生き方、働き方」があなたを待っているかもしれません。